症例解説

2024-10-24 16:49:00

分離膝蓋骨

 分離膝蓋骨とは、膝のお皿の骨(膝蓋骨)が二つ以上に分離してしまっている状態で原因は今のところ不明です。

 

 多くは10代に発症し、スポーツ中や日常生活において分離している部分に痛みが発生し、レントゲンを撮ることで発覚することが多いです。

 

 痛みを伴うものを有痛性分離膝蓋骨と言い、場合によっては手術をするケースもあります。

 

 

 

症状

 走る・ジャンプ・階段の昇り降りなど、足に体重が多くかかると痛みが発生します。また方向転換やダッシュとストップを繰り返す際にも痛みが発生します。

 

 分離しているところを強く押したり、何かに当たっても痛みが発生します。

 

 悪化すると膝の屈伸をするだけでも痛みを伴うこともあります。

 

 

 

発症原因

 分離が起きてしまうはっきりとした原因は不明です。

 

 痛みの発生は、太もも前面の筋肉(大腿四頭筋)を使い過ぎる事で膝蓋骨が強く何度も引っ張られたり、繰り返される膝の屈伸運動により、分離部分に炎症が発生し痛みが生じます。

 

 また、偏平足などの足のマルアライメントがある場合、より分離部に強い牽引力が発生するため、有痛性になりやすくなります。

 

 

 

病態

 分離膝蓋骨.png

 

図:分離膝蓋骨の分類

 

分離膝蓋骨 外側広筋.jpg

図:外側広筋による牽引

 

 膝蓋骨は栗をひっくり返したような形をしており、大腿四頭筋が全体に停止し、大腿四頭筋が働き、膝が伸びるときに上方に引っ張られながら移動します。

 

 分離膝蓋骨の多くはⅢ型の外上方の分離が多く、大腿四頭筋の外側広筋による牽引によって分離部が引きはがされます。

 

 画像以外にも3つに分離している場合もあり、確定診断にはレントゲンやCT検査が必要となります。

 

 

治療

 第一は安静です。痛みが強い場合は炎症が起きているため、運動を中止しテーピングなどで保護して安静にします。

 

 炎症が治まると、筋肉のストレッチなどを行います。

 

 ただし、繰り返し痛めている場合や、早期のスポーツ復帰を目指す場合は、股関節や膝関節や足関節の正しい使い方を覚え、フォームの修正が必要です。

 

 また多くの場合浮指や偏平足により構造上の負担が増加している場合があるので、インソールやサポーターが有効な場合もあります。

 

 

予後

 痛みが治まれば完治となります。

 

 ただし、フォームの問題や偏平足(足部マルアライメント)などの原因が改善されない場合は繰り返すこともあります。

 

 

当院での施術

 初期治療として、炎症を抑え再生を促す超音波治療(LIPUS)とカッピングを行い、早期の炎症改善を図ります。

 

 痛みが消失するまでは、キネシオテーピングにより日常生活での痛みを抑え、手技により大腿四頭筋等の筋肉の緊張を緩和させていきます。

 

 痛みが軽減してきたら、インソールマイスターによる足の正しい使い方やトレーナーによるフォームの修正指導を行います。

 

 足部マルアライメント(偏平足や浮指)がある場合は靴の選び方や履き方の指導、インソールの処方も行います。

 

 試合に間に合わせたい等の要求も可能な限りお応えしますが、出来るだけ症状が軽度または試合日程までに余裕をもって来院してください。