症例解説

2024-10-24 16:50:00

ランナー膝(腸脛靭帯炎)

 ランナー膝はジョギングやマラソンをしている人に多く発症する膝の外側の痛みです。

 

 軽傷の時は運動後に痛みを覚え、重症になるにつれて日常生活でも痛みが発生します。

 

 主な原因はなど走り過ぎで起きるオーバーユース(使いすぎ)ですが、なかなか治らずスポーツに復帰できないケースや、繰り返し痛みが発生してしまうケースがあります。

 

 また多くの患者さんに偏平足や浮指などの足のマルアライメント(機能不全や変形)がみられます。

 

 

症状

 走ったり階段の昇り降りなど、膝に体重が多くかかると痛みが発生します。

 

 初期では運動中や運動直後に痛みが発生し、運動後徐々に軽減し日中は痛みがない場合もあります。

 

 症状が悪化するとを膝に体重がかかったり、膝の曲げ伸ばしで痛みが発生する場合もあります。

 

 

発症原因

 お尻の外側にある大腿筋膜張筋の硬さにより、そこから発生する腸脛靭帯が強く引っ張られ、骨の出っ張りに何度も擦られることで炎症が起き痛みが発生します。

 

 靱帯と骨の出っ張りの位置関係により、膝を曲げ伸ばしする度に引っかかりが生じ、膝の屈伸だけでも痛みが発生します。

 

 また、偏平足などの足のマルアライメントがある場合、大腿筋膜張筋が硬くなりやすく、引っかかりも起きやすくなることで発症しやすくなります。

 

 

 

病態

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図:右膝

 

 腸脛靭帯は太ももの外側にある靱帯です。大腿筋膜張筋という筋肉に引っ張られることで股関節の動きを補助したり、膝の屈伸を行います。

 

 膝の屈曲角度に応じて伸ばす(伸展)方に働いたり、曲げる(屈曲)方に働いたりする変わった靭帯です。

 

 靭帯は膝の屈伸の際に大腿骨の外側上顆という出っ張りの上を通過します。

 

 大腿筋膜張筋が正常なら問題ないのですが、硬くなったり緊張が強くなると、腸脛靭帯が強く引っ張られ、外側上顆に擦れてしまいます。

 

 この状態が断続的に長期間続くと、靭帯に炎症が生じ痛みが発生します。

 

 

治療

 第一は安静です。痛みが強い場合は炎症が起きているため、運動を中止しテーピングなどで保護して安静にします。

 

 炎症が治まると、筋肉のストレッチや靭帯への電気治療を行います。

 

 ただし、繰り返し痛めている場合や、早期のスポーツ復帰を目指す場合は、股関節や膝関節や足関節の正しい使い方を覚え、フォームの修正が必要です。

 

 また多くの場合浮指や偏平足により構造上の負担が増加している場合があるので、インソールやサポーターが有効な場合もあります。

 

 

予後

 腫れと痛みが治まれば完治となります。

 

 ただし、フォームの問題や偏平足(足部マルアライメント)などの原因が改善されない場合は繰り返すこともあります。

 

 

当院での施術

 初期治療として、超音波治療とカッピングを行い、早期の炎症改善を図ります。

 

 痛みが消失するまでは、キネシオテーピングにより日常生活での痛みを抑え、手技により大腿筋膜張筋等の筋肉の緊張を緩和させていきます。

 

 痛みが軽減してきたら、インソールマイスターによる足の正しい使い方やトレーナーによるフォームの修正指導を行います。

 

 足部マルアライメント(偏平足や浮指)がある場合は靴の選び方や履き方の指導、インソールの処方も行います。

 

 試合に間に合わせたい等の要求も可能な限りお応えしますが、出来るだけ症状が軽度または試合日程までに余裕をもって来院してください。