症例解説

2024-10-24 17:26:00

ド・ケルバン腱鞘炎(親指付け根の腱鞘炎)

 ド・ケルバン腱鞘炎は物を持ったり子供を抱っこしたりするときに親指の付け根に痛みが出る腱鞘炎です。

 

 手の使いすぎや物を繰り返し持ち上げたり動かしたりすることで発症しますが、女性ホルモンのバランスも強く影響します。

 

 特に授乳期や更年期の女性に多く発症し、家事や育児や仕事など、日常生活への影響も大きく非常にストレスに感じます。

 

 市販のサポーターも多く販売されていますが、しっかりと原因を把握し選ばないとなかなか効果が得られません。

 

 また、放置してしまい悪化すると疲労骨折を起こすこともあります。

 

 

 症状

 物を掴んだり持ち上げたり、子供を抱っこすると親指の付け根に痛みがでます。親指を伸ばしたり開いたりするだけでも痛みが出る場合もあります。

 

 親指を握りこみ、小指側に手首を傾けると強く痛みが出ます。(フィンケルシュタインテスト)

 

 症状が進行すると親指の付け根の腫れや押さえた痛みも出現します。

 

 

発症原因

 親指~手首にかけての筋肉(長母指外転筋や短母指伸筋)を使いすぎる事で、スジ(腱)が骨の出っ張りに擦れてしまい炎症が起きます。

 

 また女性の授乳期や更年期における女性ホルモン(エストロゲン)の減少により筋肉や腱に炎症が起きやすくなる事も大きな要因になります。

 

 したがって男性より女性の方が発症率が高いです。

 

 

病態

ド・ケルバン腱鞘炎.gif

図:手関節背側

 

 短母指伸筋は親指を伸ばす(反る)働きを、長母指外転筋は親指を開く(外転)働きをする筋肉です。

 

 二つの筋肉は手首で骨の出っ張り(橈骨茎状突起)の上を通るため、使い過ぎる事で骨との摩擦が増え、炎症が発生します。

 

 女性の授乳期や更年期は女性ホルモンのエストロゲンが低下、これにより腱の周囲に炎症が起きやすくなるとの報告があります。

 

 また肩こりなどで肩甲骨や肋骨のズレがある場合は、手の使い方が上手くいかず、より発症しやすくなります。  

 

 

治療

 筋肉と腱の炎症を早期に改善させるため、物理療法と手技療法を行います。医科では注射により炎症を抑える処置がとられる場合もあります。

 

 テーピングやサポーター等により、親指と手首の動きを制限することで日常生活での痛みを抑えます。

 

 

予後

 痛みが治まれば完治となります。

 

 ただし、手首や肩の使い方の悪さや肩甲骨や肋骨のズレがある場合や、仕事等で使いすぎる場合は繰り返し痛めるケースがあります。

 

 また女性ホルモンのバランスが整うまでは痛みが軽くなったりひどくなったりを繰り返す場合もあります。

 

 

当院での施術

 初期治療として、筋肉や腱の炎症を抑え、血流や固さを改善する超音波治療とカッピングを行い、早期の炎症改善を図ります。

 

 痛みが消失するまでは、キネシオテーピングにより日常生活での痛みを抑え、手技により筋肉の緊張を緩めていきます。

 

 また肩甲骨や肋骨のズレを整えることで、手首や親指にかかる負担を軽減し、日常生活での悪化や再発を予防します。

 

 授乳期や更年期での女性ホルモンバランスの乱れが原因の場合は、骨盤調整やハイブリッド波や水素吸入療法によるホルモンバランスへのアプローチも行います。