症例解説
シンスプリント(スネの成長痛)
シンスプリントは小学生高学年~高校生に多いスネの成長痛です。
スネの内側やや下部、内くるぶしの上辺りの痛みや腫れがあり、押さえた時の痛み(圧痛)や、走ったりジャンプしたりすると痛みが出ます。
軽傷の時は運動後に痛みを覚え、重症になるにつれて日常生活でも痛みが発生します。また場合によっては疲労骨折を起こすケースもあります。
主な原因はスポーツなどを頑張りすぎて起きるオーバーユース(使いすぎ)ですが、なかなか治らずスポーツに復帰できないケースや、繰り返し痛みが発生してしまうケースがあります。
また多くの患者さんに偏平足や浮指などの足のマルアライメント(機能不全や変形)がみられます。
症状
走る・ジャンプ・階段の昇り降りなど、足に体重が多くかかると痛みが発生します。また方向転換やダッシュとストップを繰り返す際にも痛みが発生します。
腫れているところを強く押したり、何かに当たっても痛みが発生します。
初期では運動中や運動直後に痛みが発生し、運動後徐々に軽減し日中は痛みがない場合もあります。
症状が悪化するとを足に体重がかかるだけで痛みが発生する場合もあります。
発症原因
スネの内側から足の土踏まずの骨に着く後脛骨筋(こうけいこつきん)と呼ばれる筋肉を過度に使いすぎる事で、筋肉の炎症や、スネの骨が引っ張られ事で、骨の表面(骨膜)に炎症が発生します。
骨膜には血管や神経があるため、ここに炎症が起きる事で痛みと腫れが起きます。
また、偏平足などの足のマルアライメントがある場合、体重がかかるたびにスネの骨に捻る力と後脛骨筋の張力が過剰に発生することでより発症しやすくなります。(上行性運動連鎖)図1
図1:上行性運動連鎖
オーバーユースと足のマルアライメントが重なるとシンスプリントの発生リスクはかなり高くなります。
また新入学や新チームへの移行などにより春先に多く発生します。
図:足関節内側面
後脛骨筋はふくらはぎの後面から始まり、スネの内側にベッタリと着きながら内くるぶしに引っ掛かり、土踏まずの一番高い骨(舟状骨)に終わります。
後脛骨筋が働くと足首が下に下がり地面を蹴ったりします(底屈)
この後脛骨筋が使いすぎにより炎症を起こしたり、スネの骨(脛骨)の骨膜を断続的に引っ張ることで骨膜が損傷し、腫れや痛みを伴う炎症が発生します。
治療
第一は安静です。痛みが強い場合は炎症が起きているため、運動を中止しテーピングなどで保護して安静にします。
炎症が治まると、筋肉のストレッチや剥がれている骨膜の再生を促す電気治療を行います。
ただし、繰り返し痛めている場合や、早期のスポーツ復帰を目指す場合は、股関節や膝関節や足関節の正しい使い方を覚え、フォームの修正が必要です。
また多くの場合浮指や偏平足により構造上の負担が増加している場合があるので、インソールやサポーターが有効な場合もあります。
予後
腫れと痛みが治まれば完治となります。
ただし、フォームの問題や偏平足(足部マルアライメント)などの原因が改善されない場合は繰り返すこともあります。
当院での施術
初期治療として、骨膜の再生を促す超音波治療(LIPUS)とカッピングを行い、早期の炎症改善を図ります。
痛みが消失するまでは、キネシオテーピングにより日常生活での痛みを抑え、手技により後脛骨筋等の筋肉の緊張を緩和させていきます。
痛みが軽減してきたら、インソールマイスターによる足の正しい使い方やトレーナーによるフォームの修正指導を行います。
足部マルアライメント(偏平足や浮指)がある場合は靴の選び方や履き方の指導、インソールの処方も行います。
試合に間に合わせたい等の要求も可能な限りお応えしますが、出来るだけ症状が軽度または試合日程までに余裕をもって来院してください。