症例解説
シーバー病(踵の成長痛)
シーバー病は小学生低学年~高学年に多い踵の成長痛です。
アキレス腱周囲や踵部分に軽度の腫れと抑えた時の痛み(圧痛)や、走ったりジャンプしたりすると痛みが出ます。
主な原因はスポーツなどを頑張りすぎて起きるオーバーユース(使いすぎ)ですが、なかなか治らずスポーツに復帰できないケースや、繰り返し痛みが発生してしまうケースがあります。
類似疾患にアキレス腱炎や三角骨障害などがありますが、シーバー病はそれらより比較的若い年齢に発生します。
症状
走る・ジャンプ・階段の昇り降りなど、踵に体重が多くかかると痛みが発生します。
また腫れているところを強く押したり、何かに当たっても痛みが発生します。
初期では運動中や運動直後に痛みが発生し、徐々に軽減し日中は痛みがない場合もあります。
症状が悪化すると踵を地面に着くと痛みが出るため、つま先で歩いてしまう子もいます。
発症原因
未発達な踵の骨(踵骨)をアキレス腱(下腿三頭筋)が繰り返し引っ張ってしまい、骨が剥がれることで発症します。
成長期(8歳~10歳頃)に急激な骨の成長と筋肉の柔軟性の低下が同時に起きることで発症しやすく、女子より男子の方が発症率が高いのも特徴です。
図:足関節内側面
アキレス腱はふくらはぎの裏側の筋肉(下腿三頭筋)が一つにまとまった強力な腱となり、踵の骨の後ろに付着します。
下腿三頭筋は踵の骨を上方へ引っ張ることで足首(足関節)を蹴る方向へ動かします(底屈)。
成長期は踵の骨が未発達で、骨にしっかり固定されておらず、オレンジ線部分の成長軟骨によって引っ付いています。
そのため繰り返し強い力で上方向に引っ張られることでアキレス腱付着部(骨端核)が剥がれてしまいます。
治療
第一は安静です。痛みが強い場合は炎症が起きているため、運動を中止しテーピングなどで保護して安静にします。
炎症が治まると、筋肉のストレッチや剥がれている骨の再生を促す電気治療を行います。
骨が完全に成長するまで運動を中止できる場合は、時間の経過と成長に伴い治っていきます。
ただし、繰り返し痛めている場合や、早期のスポーツ復帰を目指す場合は、股関節や膝関節や足関節の正しい使い方を覚え、フォームの修正が必要です。
また多くの場合浮指や偏平足により構造上の負担が増加している場合があるので、インソールやサポーターが有効な場合もあります。
予後
完全に骨が成長することで痛みは治まります。
ただし、フォームの問題や偏平足(足部マルアライメント)などの原因が改善されない場合は繰り返すこともあります。
当院での施術
初期治療として、骨の再生を促す超音波治療(LIPUS)とカッピングを行い、早期の炎症改善を図ります。
痛みが消失するまでは、キネシオテーピングにより日常生活での痛みを抑え、手技により下腿三頭筋等の筋肉の緊張を緩和させていきます。
痛みが軽減してきたら、インソールマイスターによる足の正しい使い方やトレーナーによるフォームの修正指導を行います。
足部マルアライメント(偏平足や浮指)がある場合は靴の選び方や履き方の指導、インソールの処方も行います。
試合に間に合わせたい等の要求も可能な限りお応えしますが、出来るだけ症状が軽度または試合日程までに余裕をもって来院してください。